試し読みも掲載。『わんにゃん恋吹雪』人間が苦手な少女と、少女に懐く美少女(元犬)と美青年(元猫)の三角関係物語。Kindle本が本日1日発売!!
ついに! 一年五ヶ月ぶりの新刊が、本日発売となりました。
タイトルは『わんにゃん恋吹雪』。
犬と猫と擬人化と、百合~な感じの内容です。犬や猫好きな方にも、ぜひ読んでいただきたいです!」
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内容を、アマゾンに掲載したものからコピペ!
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◆読了にかかる時間:約61分(500文字/分の場合)
ハイスペックだけれど、他人に興味を持たず、ペットの犬と猫を溺愛する女子高生・北村吹雪(きたむらふぶき)、通称『氷の姫』。
ある日ダウンロードした変なアプリをきっかけに、愛するペットたちが人間になってしまって……!?
「わたちのこと、なでなでしてー!」
天使のような可愛らしい微笑みで、少女がすり寄る。
「吹雪。オレをなでろ」
イケメンボイスでささやきながら、青年が見つめてきた。
これは、人間が苦手な少女と、少女に懐く美少女(元犬)と美青年(元猫)の三角関係物語。
※若干の百合要素がある小説です。
【文字数:30,500文字(スペース無視)】
【イラスト数:表紙1枚】
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こんな感じとなっております。
●試し読みも掲載します!
KDPセレクトの規約にのっとって、販売作品『わんにゃん恋吹雪』の10%までを、ブログ上に試し読みとして掲載します。
( )内のひらがなは、Kindle本ではルビとして表示。
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『わんにゃん恋吹雪』(著)水沢みと
わんにゃん恋吹雪
猫と犬は、肉球の硬さからして違う生物だ。
私は、愛猫のシュウと愛犬の梨亜(りあ)の肉球を、同時にもみながら思った。
今年三歳になるシュウの肉球は、いつまでもプニプニの柔らかさを維持していて、まだ四ヶ月なのにガッチリとしてきた梨亜の肉球とはまるで違う。
土曜日の休日の我が家。自室で二匹とまったりタイムを過ごしている私の名前は、北村吹雪(きたむらふぶき)。
県内の高校に通う十六歳の女子。
自分で言うのもなんだけど、いわゆる『平凡』な高二女子では、ない。
平凡の定義が、顔は人並み、運動神経、学力などなど平均レベル……と言ったものだとすれば、その定義からは外れているから。
たとえばの話。
街をショッピング目的で歩いていて、すれ違った男子のグループが、「あの子、超可愛いな!」なんて話し出せば、その対象は間違いなく私だったりする。
生まれ持った美貌(びぼう)。それが幸運なものなのか、あるいは逆に不運のものだったのか、私はまだ決めかねている。
教師に目を付けられない程度に茶色に髪を染め、肩までのヘアのトリートメントは欠かさない。薄くメイクもして、ファッションもそれなりに研究して身だしなみを整える。
きれいな自分は、好ましいものだと思っているから。
だけど、きれいな自分を好きな自分は認めても、他人からきれいなことで好意を寄せられることには、嬉しさを感じなかった。
これもたとえばの話。
あまり好きだと思えない同性から、友達になりたいと近付かれて困惑すること。
異性に笑顔を見せただけで、好意があると勘違いされて、恋人になりたいと言い寄られること。
どちらも、楽しいことじゃないとわかってもらえるだろうか。
……ま、たとえばって言ってもどれも私に起こったほんとの話。
『たとえば』を使うことで、誰か別の人の身に起きた、関係ない話だと思いたい自分がいるだけ。
加えて、私の運動神経は、体育で走れば学年一位だし、学力においても、テストで学年三位以内は取ったりできてしまうものだから、一応平凡レベルではないと伝えておきたい。
もっとも、何も努力なしにできてしまうタイプではなくて、こうして休日に心置きなくペットと遊ぶ為に、昨日のうちに宿題を終わらせるぐらいの努力はしている。
あ、嫌いだと思った?
それならそれでしかたない。
人から見て鼻に付くのも含めて、これが北村吹雪って人間なんだから。
……そんなんだから、私は友達が一人もいないのかもしれないんだけどね。
別にさみしくはないけど。
なぜなら私には、超絶に癒(い)やしてくれる、最高の家族が二匹いるから。
キジトラにゃんこのシュウくん(♂)。
黒柴わんこの梨亜ちゃん(♀)。
可愛くて、かっこよくて、優しくて、柔らかくて、温かくて、なんかもう至高の二匹。
「シュウくんはモフモフだね~」
タプタプの柔らかお腹の感触を、手のひらで存分に味わう。
「梨亜ちゃんのお腹は、すべすべであったかいよ」
全身毛で覆われたシュウと違って、下腹部の毛が生えていない梨亜のお腹は、直接肌に触れることができて、もっちりとしている。
どちらにしても、気持ちいいことこの上ない。
二匹に挟まれて、両手に花状態だ。
犬は一緒に遊ぼうとベッタリまとわり付いてくるが、猫はこちらのことよりも、家の探索や昼寝の方を優先する。
構ってちゃんが犬。
ほどよい距離感が猫。
そうは言っても、猫が冷たい訳ではない。普段そのぐらいの距離感だからこそ、たまに寝ている私のひざ裏にボテッと乗っかってくれたり、足でフミフミとマッサージしてくれるのが、たまらなく嬉しい。
「君たちは可愛いなー」
心底そう思って、つぶやいた。
――ピンポーン。
不意にドアホンが鳴った。
至福タイムに邪魔が入ったのは不服だけど、今、両親は映画鑑賞に行って留守しているから、私が出るしかない。
しぶしぶ一階に下りて、玄関に向かった。
「どちら様ですか」
カメラ付きドアホンの画面に映っている男子は、同い年ぐらいだろうか。見覚えはない。
「あ、あの! 北村吹雪さんですよね! 同じ学年の坂下って言います」
「……」
開けるかどうか、一瞬悩んだ。だがもう居留守を使うには時すでに遅し。しかたなく、玄関ドアの鍵を開けた。
「こ、こんにちは……」
「どうも」
緊張した面持(おもも)ちの、眼鏡をかけた男子。平凡な見た目だ。その顔には、やはり見覚えはなかった。
「突然来てすみません。でも、その、僕、……北村さんが好きで!」
ほんとに唐突に、彼は言い放った。
「前から憧れてたんです! 同い年なのにすごいな~って。頭良くて、運動もできて、すごい可愛くて……」
「あなたストーカー? わざわざ自宅に押しかけて告白とか」
この時の私の顔が、いかに無表情を極めていたか、わかってもらえるだろうか。
「!!」
彼は絶句した。うん、そういう反応するよね。憧れの人だったんだもんね。
「こういう常識ない人ってほんとうんざりする。やめてもらえる? 今後、顔見せないでほしいんだけど」
「そ、……そっ……」
顔が真っ赤になっていく。だが私には、同情の気持ちは湧いてこない。
勝手に憧れないでほしい。
勝手に好きにならないでほしい。
だって私は。
「あっ、ごめん。私、人間に興味ないから」
その言葉を締めのあいさつとして、茫然(ぼうぜん)とした彼を、半(なか)ば強制的に家から追い出した。
外で、複数の男子の声がした。
「だから言ったろ? あの女、通称『氷の姫』だぜ」
「冷酷ハイスペック女。あんなの相手にするな」
さっきの男子の友達が、かわるがわる慰めていた。
と言っても、とどのつまりは、私の悪口大会を始めていた訳だけど。
――良かったね。友達そんなにいるなら、こんな女、すぐ忘れるよ。
さっさと自分の部屋に戻る。
そこには、世界で一番可愛い犬と猫が待っていた。
「ただいま。わんにゃん♪」
にへっと頬(ほお)を緩(ゆる)ませて、心ゆくまで二匹をなでた。
私は人間には、どんな表情をしたらいいのかわからない。
私が本当の笑顔を見せられるのは、ペットだけ。
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●とにかく、犬と猫への愛を忘れずに執筆しました。
●百合小説というわけではないですが、百合~な要素も入っています。
●最後まで楽しんで書きました!
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