なろうからKDPとPODでKindle本と紙の本を出す!

小説家になろうで小説を掲載したり、Kindleダイレクト・パブリッシング(KDP)とプリント・オン・デマンド(POD)で、AmazonでKindle本と紙の本を販売する!<Amazonアソシエイト・プログラムに参加>

Kindle本『イケメンGIRL!』の試し読み掲載!

KDPセレクトの規約にのっとって、販売作品『イケメンGIRL!』の10%までを、ブログ上に試し読みとして掲載します。
( )内のひらがなは、Kindle本ではルビとして表示。


▼こちらをAmazonでチェック▼

 

===============================================================


『イケメンGIRL!』(著)水沢みと

 


プロローグ


 漆黒の闇が、世界を覆う刻(こく)。
 暗闇をものともせず、あたしは仲間たちと疾走している。
 その夜の『仕事』を終えて、後(あと)は迎えの車と落ち合うのみ。
「由紀(ゆき)さん!」
 先頭を走るあたしに向かって、後ろの仲間から声が飛んできた。
「後ろ、追って来てる奴が……」
「とっくに気付いてるって」
 口の端に、余裕の笑みを浮かべる。
 首尾よく片付けたはずの仕事が、パーフェクトではなかったことへの少々の残念さは感じたけど。
 ――めちゃくちゃ、ドキドキする!
 闇が、速さが、命の取り合いが。
 それはまるで、恋のように、この胸を高鳴らせる。
 ――恋をしないあたしには、ぴったりの代償行動だ。
 身をひるがえすと、手にした拳銃の引き金を、軽やかに引いた。

 


第一話「出会ってしまった」


 その人と目が合った瞬間に、心が絡め取られる、なんて経験、この十六年間の人生で初めてのことだった。
 私、宗田翔子(そうだしょうこ)が、この私立さつき原(ばら)高校の一年生として、二学期の始まりと共に転校してきたのは、単純に父の仕事の都合によるものだ。
 会社ではそれなりの役職についている父と、専業主婦の母、そして私の三人家族。
 これまでの人生で、特に不満もストレスも感じずに生きてこられたのは、奇跡的に運がいいのだと思う。
 そんな私にとって、これからもきっと平々凡々とした日常が続くと思っていた矢先の、その人との出会い。
 これが、運命の歯車が回り始めたってことなんだろうな。

 

「宗田翔子です。これからどうぞよろしくお願いします」
 深々とおじぎをして、目の前のクラスメイトたちに頭を下げた。
 今日から一緒に学業に励む人たち。仲良くしてもらえるといいな、という気持ちと同時に、窓際の席から、私と一瞬目が合ったその人のことが、頭の中で一杯になっている。
 とても、美しい人。
 金色に近い茶髪に染めて、右で分け目を作った無造作ヘア。ショートカットが良く似合う。ピアスが耳に光っていた。
 石膏像のように整った顔立ちに、なにより心奪われたのは、その瞳。
 自信と、野心と、達観と、真っ直ぐさ。
 そんな色を宿した、強い視線。
 たった一瞬の時間の中で、これほどの強烈な印象を覚えさせた。
 釣り目がちな目が、どこかいじわるそうで、それでいて、魅力的で仕方がない。
 私が一目惚れしたのは、そんな女の子。
 後(あと)で知った名前は、『池原由紀(いけはらゆき)』。

 


第二話「視線」


「宗田さん、きれいだねー。めっちゃモテるでしょ」
 休み時間。
 私の席の周りに、クラスメイトの女子が数人やって来て、さっそくあいさつをしてくれた。
「そんなことないです」
「謙遜(けんそん)しないでも~。ロングの黒髪もすごいさらさらだし。色白でこんな美人だし。ほんと、お人形さんみたい。彼氏とかいた?」
「ちょっと理子! さすがに初対面からそういう質問は馴れ馴れしいんじゃないの」
「そっか。みちるの言う通りだね。ごめん、宗田さん。ちょっと興奮しちゃって」
「大丈夫です」
 内心ほっとして、笑顔を返す。
 自分の容姿に対して、人から好意的に見られることには慣れている。
 わりと小さいうちに、いわゆる恵まれた容姿というものを授かって生まれてきたのには気付いていた。正確には、気付かされた。大人たちの口々の褒めたたえる言葉。同じ年頃の子供たちからの好意的な言動。
 調子に乗れば、足元をすくわれるような称賛(しょうさん)だとしても、意識的に控えめにしていれば、ほとんど良い結果に落ち着く。
 鏡に映った自分を好ましく思えるのは、嬉しいことだとわかっているし、卑屈(ひくつ)も傲慢(ごうまん)もなく、私はただ、穏やかな風のように存在すればいい。
 きゃっきゃとした会話のさなか、ちらりと窓際のあの人を盗み見た。
 机にうつ伏せになって、眠っている。
 本当に寝ているのか、意識は起きているのか、そこまではわからないけれど。
「ん? 誰見てるの」
「え、えと……」
 しまった。理子さんに視線を気付かれてしまった。
「あー、池原由紀か。あいつ目立つしね。……いい機会だわ。先に言っておいてあげた方が宗田さんの為だもんね」
「なに?」
 平静を装って聞いてみる。理子さんの顔は険(けわ)しい。
「あいつのこと、クラスメイトだなんて思わない方がいいよ。てか、近付いたら危険って覚えておいた方がいい」
「どうして、そんなことを……」
 ひどい、と言おうとした私の言葉を、理子さんの言葉がさえぎった。
「池原、レズだから」
 その一言は、私の思考を止めるには充分で。
 飲んだ言葉の持って行きようがないまま、無意識的に、あの人の方を見た。
 いつの間にか、寝ていたはずのあの人は、こちらを見ていた。
 視線が合う。
 ――にこっ。
「!」
 あの人が笑った。
 その笑顔の中に、どんな感情が含まれているのか、なにも察することはできなくて。
 ただ、私はその笑みを、美しいと思った。


===============================================================

●由紀が裏の世界で戦っているのは、過去の悲しい事件が原因にあり、後々理由が判明します。
●ガンアクション等の戦闘シーンもありますが、えぐさは無く、あくまでガールズラブな内容がメインです。
●ぶっちゃけ、ハッピーエンド万歳! です。

 

興味をもたれたら、ポチッと!!
▼こちらをAmazonでチェック▼